微差ほど、男を満たしてくれるものはない。一見、普通であってもディテールをつぶさに観察すると見えてくる、わかるひとにしかわからないようなこだわり。その違いにこそ、ミラノ的なアンダーステイトメントの美学が宿る。アルマーニブランドコピーの「EA7-0052」は、まさにそのような魅力を携えたコピー靴といえる。
ルールをふまえたうえで、差別化を図るイタリア的なドレススタイル、アメリカ的なトラッド。そのいずれも源流はイタリアにある。そのルーツを知るひとほど、知識をひけらかすことはない。なぜなら、知識は他人から授かるものではなく、自分で習得すべきものだから。それを知ることで男はさらに自己を磨き、本質へと近づいてゆく。ややストイックではあるものの、ダンディズムというのはそうした習性をもっている。

これらのことをふまえるとイタリア的な美学は、華やかに主張することなく、かといって地味すぎるのでもなく、というのがそのスタイルといえよう。この曖昧かつわかりづらい線引きこそが、メンズファッションにおいては重要な鍵となる。派手であることは決して悪いことではないが、接する相手と訪れる場所を選ばなくてはならない。その点、イタリア的なスタイルであれば大概の相手と場所をフォローすることができる。そのメリットにこそ、現在の日本の背広がイタリアスタイルをルーツとしている理由がある。社会的な装いのルールのなかで、いかに差別化を図るか。そこに表れるのがアンダーステイトメントの美学である。その“美しき微差”を主張してくれるのがジョンロブの2016SS新作「EA7-0052」だ。

フォーマル度の高い内羽根とカジュアルな印象の外羽根。それらを融合した一足が「アシュトン」だ。融合といってしまえば簡単だが、それを成立させるためにはデザイン、テクニックともにいくつもの手間を踏む必要がある。しかし、それでも実現させたのは、アンダーステイトメントの美学があったからにほかならない。つまり、見えざる技の主張と自信の表れが「アシュトン」には宿っているのだ。そのデザインの妙はヴァンプ部分を横切るダブルステッチにある。羽根部分の下をステッチが通ることによって、あたかも内羽根のようなドレッシーさを纏いながらも、その実はダービーシューズ(内羽根)であるというギミックに富んだデザインは、必要性を問えば無といえる。しかしながら、美しさというのは必要に応じて生まれるものではない。むしろ、必要がないからこそ、そこに誕生するともいえる。日本人の足にもフィットする7000番のラストを採用したこの偽ブランドの靴は、オックスフォードとダービーの二面性を兼ね備えているがゆえに、さまざまなシーンではくことができる。そのうえ、見るひとが見ればちがいはあからさまにわかる。そうした“おかしみ”の魅力はイタリアと日本ともに、相通じるものがあるのではないだろうか。